2010年4月3日土曜日

エルビス所縁の地、サンスタジオとグレースランドに行く




この日はメンフィスから、ルイジアナ州ニューオリンズまでドライブする予定だったので、前日から「早起きしよう」と、夫と誓い合っていた。朝一番で行きたい「サンスタジオ」は10時からの開館である。ここではガイド付きのツアーがあるから、これに絶対遅れたくない。こういう訳で、べーグルとオレンジだけの朝食を取り、余裕を持って10時までにはサンスタジオ前に到着した。このスタジオには、建物の後ろに駐車場があるので、便利である。















スタジオのドアを開けると、まずカフェテリアのようなお土産売り場がある。後に参加したツアーのガイドの話では、この場所は元々レストランで、エルビス等が活躍していた当時、この界隈で冷房だか暖房だかがあるレストランはここだけだったので、人が良く集まったという。この土産物売り場でツアーのチケットを購入し、ツアーが始まるのを待った。時間が無いのに、最大限にメンフィスを見たいと思っていた私達には運悪く、ツアーは10時半からだということだった。「それなら、公民権運動博物館にもう一度行って、お土産のビデオでも買ってくれば良かった」などと思ったが、それをするには、中途半端である。仕方がないので、辛抱強く、店にあるものを見ながら待つことにした。サンスタジオ特製のTシャツや、エルビス・プレスリーに関するグッズがたくさんあった。壁の至る所には、サンスタジオで録音した数多くのスター達の写真が飾ってある。カフェテリアの中央には、数人の男性が、ピアノの前に座るエルビス・プレスリーを囲んで話をしている、大きな写真があった。何でも、とある有名な曲が作られた場面だったそうで、サンスタジオの中にある数多くの写真の中でも一番有名なものらしい。



















写真を撮ったり、土産物を見たりしながら、いつの間にかツアー開始の時間になった。それまで土産物売り場でレジ係をしていた小柄な若い女性が、私達のツアーのガイドらしく、彼女は笑顔でツアーが始まる事を告げ、2階に行くよう指示を出した。狭い階段を上がって2階に行くと、小さな部屋の中に、ガラスケースに収まった展示品があった。他の人たちが上がってくる前に、夫はエルビス・プレスリーの写真やギター等が収められたコーナーを、写真に撮った。




ガイドが2階に上がってくると、彼女は自己紹介を始め、サンスタジオの歴史を語り始めた。サンスタジオは、エルビス・プレスリーが初めてレコーディングした場所だが、彼の他にもこのスタジオでレコーディングし、ヒットを生み出したスター達は、たくさんいる。その中に「プりズナーズ」というグループがいて、グループ全員、元囚人ということだ。




エルビスは貧しい家庭の出身で、家族の中で高校を卒業したのは、彼が初めてであったという。なので、エルビスは高校を卒業したことを、とても誇りに思っており、彼の本当の卒業証書が、サンスタジオに展示されている。エルビスが初めてサンスタジオにやって来たのは18才の時。「お母さんの誕生日のプレゼントとして、曲を贈りたい」というのが、レコーディングに来た建前だったというが、実際は、サンスタジオのスタッフを感動させようとしたエルビスの作り話だったらしい。そんな無名の、配達の仕事をしていた若造の才能を見出したのは、サンスタジオの社長、サム・フィリップスではなく、彼の女性秘書マリオン・ケイスカーであった。サムはエルビスがやってきた時、スタジオにはおらず、マリオンがエルビスのデモテープを聞かせた時も、それほど感動しなかったという。その最初のテープは、サムが当時求めていた音楽と違っていたのだ。エルビスの才能を最初に見出したマリオン・ケイスカーの写真は、初めに入った小さな展示室に飾られており、彼女が使っていた机も、その当時と同じようにサンスタジオに存在する。

階段を降りて、いよいよスタジオの中に入る。そこはなんの変哲も無い、古いスタジオで、ギターやドラム等が無造作に置かれていた。ガイドの話によれば、社長のサムと、秘書兼副経営者でもあったマリオンが、自らの手で、小さな穴がたくさん入った白い板を、壁や天井に張り巡らしたということだ。それはかなり古く、所々外れかけている。有名なスター達が録音したのでなければ、ここをこんなにたくさんの人が訪れることはないだろう。しかし、このサンスタジオは、メンフィス市だか、テネシー州だかの歴史的建造物に指定され、取り壊しできないらしい。そしてこのガイドの話では、アメリカでは全国的に有名なニュースキャスター、トム・ブローカーが来たそうだ。トム・ブローカーに講義ができるとは、ずいぶんすごいことだと思う。こういう風に、有名な観光地のガイドになれば、セレブにお目見えする機会もあるのだと、変な所で関心した。このツアー小一時間ほどであるが、内容はとても良いと思う。アメリカの歴史を発見できる、有意義な時間であった。ツアーの後は、スタジオ内で自由に写真を撮ることができ、夫と私は、エルビス等が録音に使ったマイクを前に、写真を撮った。こうして後で見ると、ほとんどカラオケ状態のように見える。


















サンスタジオツアーの後は、エルビス・プレスリーが住んでいた「グレースランド」を外から見て、ニューオリンズに向かおう、ということになった。住所を確認すると、グレースランドは、「エルビス・プレスリー大通り」という所にあるらしい。自分の名前が地名になるとは、さすがである。そんなことに関心しながら、高速に入り、GPSに誘導されるまま、「エルビス・プレスリー大通り」で降り、ローカルな道に入る。夫は以前出張で来た時に寄ったエルビス・プレスリーの土産屋に行きたいと言い、そこに立ち寄ることにした。そこは、本当にエルビス・プレスリーに関するグッズだけを売っていた。私は、そこで、いつもすることだが、絵葉書を買った。



土産物屋から歩いて、やっとエルビスが住んでいたグレースランドに到着する。そこは、思ったより、こじんまりしているように、私の目には映った。これくらいの邸宅なら、アメリカ中西部には、たくさん存在する。門番の女性に、中に入っても良いかと聞いたら、チケットを向かいの事務所で買い、バスに乗ってでないと、敷地内にはは入れないということなので、道から見るだけにした。ここのチケットは、意外と高いと聞いており、時間もないことなので、すっぱり割愛して、ニューオリンズに向かうことにする。しかし塀に書かれたファンのサインだけは、写真に残しておこうと思った。



グレースランドのすぐ近くにあるハンバーガーショップのドライブスルーでランチを購入し、この後、いよいよニューオリンズを目指す。私はかなり興奮していた。メンフィスがあるテネシー州も、訪れたのは今回が初めてだったが、この後ドライブするミシシッピー州、ルイジアナ州も、私はそれまで行ったことがない。新しい州に行くというのは、それだけで、ずいぶん意義のあることに思えた。

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