2012年9月24日月曜日

アーカンソー州バッファロー・ナショナル・リバー4/ゴーストタウン・ラッシュ


 食料品をキャビンの冷蔵庫に入れ、かなり日の入り時間に近づいていたが、旅の時間は無駄にできぬと、キャビンから5マイルほどの「ラッシュ」というゴーストタウンに行った。地図は持っていなかったのだが、ドライブ中に「ラッシュ」の道標を見つけていたので、その方向に行けば見つかるだろうと思っていたのだ。角を曲がってすぐにあると思いきや、これまた延々と舗装されていない曲りくねった田舎道を走る。この地方では、「道標があったらそのすぐ近くにある」という概念は、捨てなければならないということに気付いた。都会に住んでいる人とは距離感がかなり違うようだ。「あそこの角を曲がってそこにある」ということは、「角を曲がってそこから5マイル、10マイルと走ったら見えてくる」と予測した方が、時間配分上、自分が後で苦労しないという事がわかったと言えば良いか。

 「ラッシュ」という地名は、「ゴールドラッシュ」のように、この地方で亜鉛が発見され、人々がこの地方にラッシュ(押し寄せる)したことに由来するらしい。1880年代に亜鉛が発見され、ピーク時の1910年代には五千人がこの山間に住んでおり、一日に二百トンもの亜鉛が採掘されたということだ。第一次世界大戦で、亜鉛の値段が急高騰し、ここには採掘会社の他、ホテル、郵便局、学校、店など、町として充分機能できる施設があったというから、驚きだ。町の店の主人は結婚式を挙げるライセンスも持っており、村の中で正式に結婚式があげられたそうだ。現在ここは、国立公園になっており、これら崩壊しかかった古い家は、保護されている。


 このトレイルは、午前中に行った「インディアン・ロックハウス・トレイル」とはかなり違って、車で中を行く事ができる。誰でも行けるし歴史も学べるので、お勧めだ。



 これは、「モーニング・スター採掘会社」の溶鉱炉。ここで掘り出した鉱物を溶かし精錬した。




 この崩壊しかかった様相から想像するのは難しいのだが、上の写真は、Taylor-MedleyStoreという店で、この村の社交場の一つだったようだ。ここは郵便局も兼ねており、切手を買ったり、郵便を出したり、受け取ったりできた。ここの主人は結婚式を司ることもできた。




 これがその当時の様子。店の前のポーチに村人達がくつろいでいる。このゴーストタウンから想像できないのだが、ここでソーダ水を飲んだり、ゴシップに花を咲かせていたのではないだろうか。村人達は、ここで食料品を買っていたということである。



 これが最後の店主Lee Medley。郵便局事務所になっている場所で、後ろに見える小さなボックスは、私書箱だろう。こうしてみると、本当に機能していた町だったのだ。この店は1956年に閉店された。



 村の鍛冶屋。この当時、鍛冶屋は無くてはならない重要なビジネスだったようで、馬車の部品や馬の蹄鉄を作り、販売していたようだ。今で言えば、自動車部品のメーカー及び販売といったところだろうか。現在は存在しないが、この右側に部品を保存する倉庫があったそうだ。




 馬に馬具を着けているようである。




 鍛冶屋のすぐ近くに採掘会社の店と事務所があった。現在は残っていないのだが、この写真の左側が、Chase and Mulholland Storeで、右の建物がMorning Star Mine会社の事務所だ。1915年には83名がこの会社で働いており、炭鉱夫達は、この店で買い物をし、その支払いは給料から差し引きされたようだ。この建物は1920年後半まで使用されていた。




 実際に働いていた炭鉱夫達。亜鉛は黄色く、「七面鳥の脂肪」と呼ばれていたそうだ。



 これも想像するのが難しいのだが、これは製造所跡だ。ここで一日に二百トンの亜鉛が精錬された。1898年に建設され、蒸気で稼働させていたようだ。




 写真上は、1916年に行なわれた洗礼式の様子。こうして実際に川で水に浸り、洗礼を行なっていたようである。下の写真は、ラッシュにあった学校の生徒と先生達。




 一通り公園内にあるスポットは全て見て、奥の方までドライブした。走っている途中、川が見えた。あそこで洗礼式を行なったのだろうかと思った。更に走ると、キャンプ場があった。多分ここのキャンプ場はシャワーやトイレが無いのだろう。こういう風に、”Primitive camping"というのがあるが、シャワーもトイレも無しに、どうやってやっていくのだろうかと思う。

 行き止まりまで来ると、Buffalo National Riverのサインがあり、川まで降りられるようだった。そこで車から降り、歩いて川の岸辺まで行った。そこには水着を着た女性が一人居て、迎えの車を待っているようだった。彼女に「泳いでいたの?」と聞くと、「ええ、気持ちよかったわよ」と言う。そこには結構深い水があった。水に触ってみたが、結構温かい。すると、どこからかトラックがやって来て、カヌーを引き上げていた。ここはカヌーの到着地でもあるようだ。そこで夫は、そのカヌー業者に話しかけた。彼がくれた名刺にある電話番号に電話すれば、予約できるということだ。彼の話す英語は、私には少々聞き取りにくかった。ミズーリ州で「この英語わからない」ということは滅多に無いが、一つ南の州アーカンソー州まで来ると、かなり発音が違う。南部に居るんだなあと思った。

 こうして私達はキャビンに向かった。

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