2010年3月20日土曜日
セントパトリックデーと、コンビーフとキャベツ
今週の水曜日は3月17日で、セントパトリックデーだった。前日の火曜日、たまたま会社帰りに立ち寄ったスーパーの入口で、たった1ドルで売られている緑色のTシャツの山を見つけた。翌日のセントパトリックデーで、緑の服を着ずに出社し、「つねられる」なんてことは、実際にはないのだが、うちの会社では結構みんな、こういった行事を楽しむ人が多いので、今年は緑の服を着ていこうと、この緑のTシャツの山に近寄った。ビニール袋から取り出されているTシャツはXLで、私には大き過ぎる。試しに「S」を袋から取り出してみると、意外に大きい。なので「S」を自分用に、「XL」を夫用に買うことに決めた。
そのTシャツが入ったカートを押し、更に奥に進んでいくと、今度は「コンビーフ」に遭遇する。セントパトリックデーの伝統料理は「コンビーフとキャベツ」で、どうやらアイルランドの人達は、こういった料理を食べているらしい。これは買わないわけにはいかないと、1パックカートの中に入れたが、コンビーフなど、今まで作ったことがなく、作り方がわからない。日本人のイメージでは、コンビーフというと、どうも「缶詰」に入ったドライなものを想像するのだが、パッケージに書いてある指示を読むと、どうやら「茹でる」らしいのである。パッケージに入っている肉は、私がイメージしていた「ほぐされた肉」ではなく、デーンと大きな塊で、しかも「生」だ。赤く血に染まった漬け汁には、なにやら黒い丸いものが入っている。まあ、作り方はインターネットで調べられるから、とりあえずキャベツを買おうと野菜売り場に行くと、キャベツが特売になっている。フムフム、やっぱりセントパトリックデーには、皆キャベツを食べるんだなと、アメリカ移住何年目かわからない昨今、妙に感心した。キャベツを一つカートに入れ方向転換をすると、なんとアメリカ人の友人の顔が見える。彼女にはサンクスギビングやクリスマスなど、アメリカの伝統行事で「作り方がわからない!」という時、何度か窮地を救ってもらっている。こんな時に、さらに今まで会ったことがなかったスーパーで巡り会うとは、なんという幸運か!早速コンビーフの作り方を聞くと、やはり「水を入れて茹でる」という。
「ちょっとゆすいだ方がいいわよ。ほら、ここにシードが入っているでしょ。こんなのを噛んだりしたくないものよ。」
というのである。私の頭の中は、更に混乱した。水を入れて茹でるのに、調味料は全て捨ててしまうのか。そしたら味がなくなってしまうのではないか。そして、
「キャベツや人参や玉ねぎを入れるのもいいわね。私なんか、肉よりも野菜の方が好きなくらいよ。玉ねぎは小さな「パールオニオン」を入れるって言う人もいるけど、大きいのでも大丈夫よ。」
と言う。そこで私が、
「玉ねぎなんて、切っちゃえば一緒でしょ。」
と言うと、
「いやいや、野菜は切らない。」
と言う。更に頭の中が混乱だ。どーもイメージできない。私としては、コンビーフにサワークラフトをパンに挟んで食べるという、まるでサンクスギビングデーの翌日の、ターキーサンドイッチのようなものを想像していたのだが、どうやらずいぶんちがうらしい。腑に落ちない顔をしながら友人と別れ、レジに向かう。
家に帰って、早速インターネットでレシピを調査し、そこでなぞが解ける。要するに、「コンビーフとキャベツ」とは、「ポトフ」のようなものなのだ。私がイメージしていた「缶詰コンビーフにサワークラフトを添えて、サンドイッチ!」は、大きな間違いである。(これはこれでおいしそうではあるが。)作り方にはいろいろあって、どうしようか迷ったが、結局、初心者の強い見方「スロークッカー」を使って作ることにした。パッケージをはさみであけ、「ブリスケット」と呼ばれるどでかい肉の塊を、スロークッカーの容器の中央に置く。そして適当に水を入れ、「弱火7時間コース」で調理を始めた。1時間半ほどして玉ねぎを加え(やはり丸ごと入れる気はせず、大きめに切りました)、その後、キャベツも加えた。本当はジャガイモも加えたかったのだが、容器がいっぱいになってしまい、断念。途中で眠くなり、後はスロークッカー任せで、就寝することにした。
翌朝、スロークッカーは、保温状態になっていて、蓋を開けると、いい匂いがする。ナイフで小さく切って、コンビーフを食べてみると、これが非常においしいのである。日本の缶詰コンビーフとは、雲泥の差がある。スロークッカーを使ったのは、正しい選択だった。肉がとても柔らかいのだ。しばらくすると、夜勤明けの夫が帰ってきた。
「キャベツの臭いがする。」
夫は、少々顔をしかめた。夫はキャベツが好きではないのだ。キャベツ嫌いのアイルランド系アメリカ人。ご先祖様が、泣いてはいないか。キャベツが嫌いだろうがなんだろうが、妻が初めて作った「コンビーフとキャベツ」である。強制的に食べさせた。
「お母さんは、コンビーフとキャベツ作ったことあるの?」
たぶん、記憶になかったのだろう、返事が返ってこなかった。
前日スーパーで買った1ドルグリーンTシャツと、シャムロック型の緑のビーズネックレスをつけて、出勤である。会社の半分以上の人は、やはり、緑色の服を着ているが、ビーズまでつけている人は少なかった。ランチに、もちろん自宅から持ってきた「コンビーフとキャベツ」を食べた。おいしかった。ジャガイモ入れたら、もっとおいしかっただろうなと、少々、後悔。来年は、キャベツを入れずに、ジャガイモだけにしよう。そしたら、夫ももっと喜んで食べてくれるだろう。夫が仕事なので、バーに行くことができないのは分かっていたので(私としては、こちらの方が典型的なセントパトリックデーという気がする)、このくらいで、今年のセントパトリックデーは終了した。
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