2012年9月4日火曜日

共和党全国大会


 ハリケーン・アイザックの影響で一日遅れになりながらも、三日間に亘ってフロリダ州タンパで行なわれた共和党全国大会。もちろん私は現地には行っていないのだが、テレビでしっかり三日間とも見た。正直言って、この共和党全国大会を見て安心した。世間では、共和党の莫大な資金力に任せて、オバマ大統領に対する批判キャンペーンが渦巻いているが、共和党がこんな党大会しかできないのなら、オバマ大統領に到底太刀打ちできない事が、私にははっきりしたからだ。



 党大会初日にスピーチしたのがこのお方、ミット・ロムニーの妻、アン・ロムニー。「テレビの写真を撮れば、ブログに載せられる」という名案が湧いたのが最終日になってからだったので、彼女がスピーチしている番組は録画を消去してしまったのだが、この写真は最終日に彼女の夫ミット・ロムニーがスピーチをしているのを聞いている場面だ。アン・ロムニーは、夫との間に五人の子供を産んでいる。全員が男子で、息子五人が勢揃いしてテレビに映っていたのを見た時は、驚いた。アン・ロムニーのスピーチは、本当を言うと、途中で我が家の愛犬ボジョの散歩に行かなくてはならなかったので、最後まで見なかったのだが、最初の10分くらいは見た。私の側から言わせてもらうと、彼女のスピーチよりも犬の散歩を選んだのは、そのスピーチがあまりにも内容の無いものだったからだ。女性票の獲得を狙ったのは良くわかる。それを妻の彼女に託したのは、良くわかる。しかし彼女のスピーチは、「ああ、女性の同士たちよ、母達よ。最も素晴らしいのは、あなた達です」といった内容で、それがどうして夫のミット・ロムニーに結びつくのか、私には解らなかったのだ。彼女自身が大統領に立候補しているのならわかるが、ミット・ロムニーの応援演説で、女性について語る。私には、その関連性が全く見えなかった。




 二日目の目玉は、副大統領候補者のポール・ライアン。この写真も三日目のもので、彼自身がスピーチしている番組は消去してしまったのだが、これは、特別スピーカーのクリント・イーストウッドの怪奇なスピーチを聞いているところだ。隣に居るのは、ポール・ライアンの妻。ポール・ライアンは現在、「嘘つきライアン」とあだ名されている。それ程彼のスピーチはでたらめでいっぱいだったのだ。よくもまあ、こんな阿呆な嘘を、それも簡単に嘘だと見抜ける嘘を、それも彼の人生最重要の場面で言えるとは、彼のスピーチライターがよっぽど間抜けで、それを彼自身と委員会が見抜けなかったのは、ポール・ライアンにとっても、共和党にとっても、あまりにも不運だったとしか言いようが無い。「嘘つきライアン」の筆頭理由は、彼が自動車製造会社GMのウィスコンシン州工場閉鎖が、さもオバマ大統領のせいであると言い、それ以上に確実な歴史に刻まれた嘘は、この工場閉鎖が、オバマ大統領の就任期間に起こったと言ったことだ。実際は、オバマ大統領が就任する以前、ジョージ・ブッシュの期間に、その工場は閉鎖された。そんなことは記録にあることで、簡単に嘘だと見破れるのに、なぜにライアンはスピーチしたのか。それも副大統領候補指名受諾演説で。スピーチライター任せにした彼が、事実を知らなかったのか。彼のスピーチは、あまりにも虚弱に私の目に映った。「Puppy」「小犬」という文字が、私の頭から離れない。彼のスピーチから、何一つ新しい政策は見られなかった。「自分が副大統領になったら、この不景気を改善します」、それは素晴らしい。じゃあ一体、その不景気改善に対し、実際何をするというのか。彼の計画案は、全くこのスピーチには無かった。



 そして、この背景と共に現れたゲストスピーカーは、なんとかの有名なハリウッド俳優・監督のクリント・イーストウッド。会場に居た共和党支持者達は、大喜びだった。しかし、しかしだ。世の中で、これほど奇妙な応援演説は、見たことが無い。と言うのは、


隣に置かれた誰も座っていない椅子に向かって、オバマ大統領がそこに座っているかのように、話し始めたのだ。もちろんスピーチライターがいて、全てシナリオ通りに語っており、その語り口調は、さすが超一流俳優だけあり立派なものであったが、これはあまりにも馬鹿馬鹿しい舞台である。その内容も、ポール・ライアンのものと大して変わらず、何も斬新なものは無い。この茶番劇自体が斬新だと、共和党委員会は思ったのか。これはあまりにも悲劇である。このスピーチの直後、「Invisible Obama」「目に見えないオバマ」と題したTwitterが始まり、そこにはこのイーストウッドのように、誰も座っていない椅子を指差す写真が投稿され続けている。投稿者の数はうなぎ上りで、なんとオバマ大統領自身も参加しているのだ。その写真は、ホワイトハウスの椅子に座っているオバマ大統領の背中で、そのコメントというのが、“This seat's taken”「座っています」というものだった。このユーモアは、オバマ大統領らしい。現在、空席を指差す事は、“Eastwooding"と呼ばれている。私のFacebookに投稿された写真の中に、上の写真のようなものがあり、そこには、「だから、老人医療保険をカットしてはいけないのだ」と書かれていた。82歳のイーストウッドを、まるっきり馬鹿にしたもので、このような対象になってしまったイーストウッドは、取り返しのつかない過ちを犯してしまったというものだ。


 話題騒然のイーストウッドに対し、共和党大統領候補者の当本人ミット・ロムニーは、ずいぶん陰が薄かった。翌日のニュースでは殆ど彼について語られず、コメンテーター達が一様に「奇妙なスピーチに開いた口がふさがらない」といったコメントを残したイーストウッドの茶番劇のみがスポットライトを集めたのだ。内容も、これまた何も新しいものは無い。全てシナリオ通りのつまらないもので、「出費をカットする」という一辺倒。「出費をカットする」とは、どういうことなのか。つまり、本当に政府の援助を必要としている人たちへの対策を、全て打ち辞めてしまうということなのだ。基本的に、共和党のモットーは、「貧乏人が貧乏人でいるのは、彼らの責任で、お金持ちの自分に税金を払わせるなんて、とんでもない、辞めてくれ!」といったものである。こんな人が大統領になってしまったら、大変なことである。その証拠に、大統領候補指名を受諾した直後の「レイバーデー」に、彼はバケーションに行ったということだ。全く考えられないことだ。

 今回の共和党全国大会が、共和党にとって大きな痛手になったことは、明らかだ。ミット・ロムニーとポール・ライアンの人物性の低さ、政治家としての中身の無さが浮き彫りになったというものだ。アメリカ国民が、真実を見抜いて欲しいものである。

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