2011年9月29日木曜日

ミズーリ州ブランソン:SIX



 ブランソン最後の夜も、ショーを見て締めくくった。しかし、ここで問題発生である。私達は、激安チケット売り場で購入した「ショージ・タブチ」のショーを見に行く予定だったのだが、当日、予約券を持って窓口に行くと、私達が持っている券では、チケットを渡すことができないと、窓口係が言うのだ。どういうことなのか?昨日の「カンフー伝説」の劇場では、何も問題無くすんなり入場できたのに、このチケット販売人は、頑として私達の予約券を受け付けない。「この色の用紙じゃなくて、ピンクの用紙が必要なのよ。」どうやら「激安チケット」と言いながら、ちっとも激安で無かっただけでなく、こんな初歩的なこともまともにできない男から、私達は、チケットを買ったようである。ブランソンの街の至る所に、このような「半額チケット発売所」と看板を掲げる事務所がある。これは全て、私達が前に参加したような「タイムシェア」の会社が経営する物だと思って、間違い無い。この後、タイムシェアのセミナーに参加し、どんなセールス攻撃もかわす自信があるか、又は本当にタイムシェアに興味がある方は、利用する価値があろうが、そうで無ければ、後悔するはめになるかもしれない。
   
 ここで、夫はこのチケットを購入した男に、電話をかけた。その男は随分驚き、翌日のタイムシェアセミナー会場で、今回の予約分は払い戻しするから、今日の所は、新たにチケットを購入し、ショーを楽しんでくれと言うのである。この時点で、ショーは既に始まっていた。このイザコザで随分頭に来ていたし、高いチケットを更に買って、ショーの途中から見る気にもなれなかった。それで、「もういい!全部キャンセルだ!」と、翌日のセミナー会場で払い戻しだけしてもらうことにして、ショージ・タブチさんのショーは、諦めることにした。

 さて、その後私達がどこに行ったかと言うと、ブランソンではかなり人気の「SIX」というショーである。ショージ・タブチのショーは七時半からで、SIXは八時からだったのだ。そういえば、この劇場に来る途中、「SIX」の劇場前で交通渋滞が起こっており、大型観光バスが、駐車場に何台も停まっていた。それで大急ぎで、SIXの会場に向かう。人気のあるショーだから、こんなギリギリに行って、チケットが購入できるかどうか心配だったが、相席では無いながらも、なんとか二枚チケットを手に入れることができた。

 私達の席はどちらも、入り口近くの最後部にあった。ここは前日の「カンフー伝説」と違い、劇場いっぱいに観光客が詰めかけていた。天井も低く、席も小さい、少々古びた劇場である。両隣に観客がおり、かなり窮屈であった。

 ショーはすぐに始まった。「SIX」と言うのは、どうやら六人の兄弟が、アカペラショーをやるので、そう名付けたらしい。その兄弟の内の一人がスキーに行き、骨折したので、このようなギブスをはめているというのを、ビデオ付きで説明していた。それが、「本当は、骨折したなんて嘘じゃないの?」と思う程、会場中が大笑いするジョーク満載の内容だった。どうやらこの兄弟六人は、歌だけでなく、コメディーの才能もあるらしい。

 彼らは「懐メロ」をメインにやるようで、中には私も知っている曲がいくつかあった。肝心の歌の方は、「超上手い」とは思わない。「そこそこ」と言ったら失礼かもしれないが、全国レベルのスーパースターに比べれば、やはり「地方の巡業者」といった感が拭えない。この程度のショーで満席になるのに、なぜ世界一流と言っても良い「カンフー伝説」は、ガラガラなんだろうと、納得できなかった。ここにいる客全員を総動員して、「カンフー伝説」の劇場に連れて行きたい気分だった。

 途中一回休憩が入る。夫も私も、ロビーに出た。客の大半がそこに出てきたので、ロビーは一杯になった。そこはアメリカで良く見る土産物売り場であった。チョコレートファッジがあったので、夫が一つ購入した。

 ショーの終盤で、唯一のオリジナル曲が披露された。それは彼らの母に捧げられた曲だった。沢山の子供を産んだ女性の写真が公開され、それは感動する物だった。その後、退役軍人を祝おうと、まず、「第二次世界大戦」に行った人は、立ってくださいと言う。「立てるならですけどね」と、老齢になっている退役軍人のジョークを言うのも忘れない。そして「朝鮮戦争」、「ベトナム戦争」、「イラク戦争」と現在に近づく。会場は拍手喝采である。こういう場面を見ると、私はいつも興醒めしてしまう。疎外感等と言うものでは、決して無い。ぞーっとした悪寒が走るのである。「これが、日本の軍事国家を終了させた国か」と、疑問が湧くのである。そして、「こういったことを、安心して言えるブランソンに生まれ育って、自分たちは幸せです。ガッド・ブレス・アメリカ」と、教会のような雰囲気にまで達すれば、私にとっては、驚きの色を隠せない。そうか、ブランソンは、そういった場所なんだと、社会見学の気分にまでなった。なんだか、この土地の人々の本質を見たような気がした。

 そんなこんなで、ブランソン最後の夜は、終了した。

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