2011年9月17日土曜日
カンフー伝説
ブランソンは、エンターテーメントショーで有名な町だが、私達が初めてショーに行ったのは、ブランソン二日目の夜だった。夫は「デキシー・スタンピード」が見たいと言っていたが、生憎、チケットが取れず、その代わりに「カンフー伝説」というダンスのショーを見ることにした。実は、私は、こちらの方が「デキシー・スタンピード」より、遥かに興味があった。インターネットで見たビデオは、なんだか凄そうである。http://www.youtube.com/watch?v=F2o71sBIYkk
開演までには、まだ充分時間があったので、劇場内の土産物売り場で、時間を潰す。「カンフー」というだけあって、やはり出演者は全員、中国人らしかった。その土産物売り場には、ショーに関する物よりも、中国の土産物が多く、中国の伝統的なシャツや扇子、置物等を、夫と一緒に手に取って、見学した。
入場時間になると、入り口に係員が立ち、観客が中に入っていく。私達もチケットを係員に渡し、薄暗い通路の中に入る。劇場は、収容人数五百人くらいだろうか。巨大ではないが、中国の町が描かれた緞帳や、天井からぶら下がった提灯が感じ良く、新しい劇場が気に入った。しかし、意外にも観客数は少なく、席の大部分は空いている。
ショーは、客席通路にいた、ダンサー達の鐘の音から始まった。空席が目立つ劇場ながらも、ダンサー達は観客席エリア一帯に配置され、ポンポンいう木魚の音が、サラウディング・サウンドさながら、劇場一帯に木霊する。夫と話しをしていたせいか、彼らがいつの間にか、通路に待機していたことに、全く気付かなかった。それとも彼らは、カンフーの訓練を受けた人達だから、音も無く、観客に気付かれること無く、背後に隠れられるのかもしれない。まるで忍者のようである。何十人という僧侶の衣装をつけたカンフーダンサー達が、木魚を叩きながら、一斉に舞台に上がる。それがソソクサと、風のような早さで、そのまま、枯れ葉の渦の中に、ドロンと消えてしまいそうな勢いだ。
このショーで私が一番気に入ったのは、ダンスだけではなく、しっかりとしたストーリーがあること。それ故、感動も大きい。そのストーリーというのは、小さな男の子が母に連れられて、修行のため、寺に預けられる。男の子は、母と離ればなれになったことを悲しむが、修行に励み、カンフーを身につけ、最終的には、カンフーマスターになるというストーリーである。と簡単に書いてしまったが、その途中には、色々なことが起こる。青年期に入り、女性への「邪心」で修行に身が入らなかったり、母が亡くなり悲しみに打ちひしがれるという、人間的なシーンもある。
ダンスは、すごかった。今までの人生の中で、それほど生のダンスを見たわけでは無いが、私が見た中では絶対に一番すごかった。やはり、テレビで見るのとは、全く違う。客席がステージよりも低かったせいか、ダンサー達は随分背が高く見えた。プロの鍛え抜かれたダンスは、世界レベルだと思う。軽々と舞台から飛び降りる様は、まるで猫の様である。最近流行りの長い布にぶら下がって踊るのも、すごいと思う。女性ダンサーが男性を支えながら、布に巻かれてブラブラ空中遊泳するなんて、あの細身のバレリーナのどこに、そんなパワーが隠されているのか、不思議である。
(これは、劇場のポスターを、私がカメラで写したものです。)
槍の上に腹這いになるとか、瓦を割るとか、随分痛そうな技も披露される。これは、「踊り」を担当していたダンサーではなく、少々がっしりした人がやっていた。
(こちらも劇場内のポスター。)
そして、踊りの振り付けも素晴らしい。ストーリーが有るからこその美しさの上に、やはり一人一人のダンサーの技量には、圧倒された。私がイメージしていた「うりゃ、うりゃ」と掛声かけるようなカンフーダンスはもちろん、美しい「踊り」と言える振り付けも沢山あった。そして、ステージの背景の美術も美しく、現代的である。鮮やかな光を酷使するこのアートを見て、中国人のアーティストが、アメリカのどこかの花火大会をデザインして、その素晴らしさに拍手喝采を貰ったことを、思い出した。
こんなにすごい、一流のショーが見られるのに、観客が少ないことが、大変残念だった。やはり、老人を対象にしたアメリカ中西部の観光地では、中国人のショーを見ようとする人は、少数なのだろう。これがニューヨークのブロードウェイなら、きっと満員大盛況だと思う。アメリカ人にも、アジアの素晴らしいダンスを、ぜひ見てもらいたいものだ。
ショーの終了後には、ダンサー達がロビーに集まり、観客達にさよならを言う。ここで、ポーズを取るダンサー達と一緒に、写真を取ることもできる。夫も私も、一緒に写真を取らせて貰った。
あっぱれな演技を見せてくれたダンサー達に感謝。ブランソンに行く機会があったら、ぜひ見ていただきたいショーである。
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