2011年7月31日日曜日

結婚五周年記念#2 ワイナリー:Belvoir Winery



 クレープ屋で食事した後は、お待ちかねのワイナリーに向かった。「Belvoir Winery」(http://www.belvoirwinery.com/)の「ベルボワー」とは、フランス語で、「美しい眺め」という意味である。その名の通り、そのワイナリーは、フランスの田園にある古城のような貫禄があった。



 291号線からワイナリーの入口に入ると、上の写真のような風景がある。インターネットで見る限り、随分田舎にみえるので、リバティーでもきっとはずれの方にあるのだろうと思っていたら、意外と住宅地のすぐ近くにあった。しかしワイナリーの敷地は広大で、延々と緑の芝生が広がっている。入口から見ると、すぐに結婚式で使われる東屋が見えた。こんな所で結婚式を挙げれれば良かったのにと思う。




 このブロック作りの建物が、ワイナリーの本拠地である。この建物は元々、孤児院だったそうだ。所有していたのは、イギリスで発足された「Odd Fellows」のアメリカ組織「International Order of Odd Fellows」で、これがどんな組織かというと、要するに慈善団体だったらしい。



 上の写真の上部にある「三つの輪」が、Odd Fellowsのシンボルで、左から「友情」、「愛」、「真実」を表しているそうだ。



 上のオトボケな夫が何をしているのかというと、「幽霊を見つけた」ポーズをしているらしい。このワイナリーは、「幽霊が出る」らしく、後にツアーを行なってくれた若い男の子も、「絶対誰も居ないはずの三階から、物音が聞こえた」と証言していた。




 この日はとても暑い日で、ステンドグラス付きのドアから中に入ると、クーラーの利いた涼しい空気が気持ち良い。中に入るとすぐ、テイスティングが行なわれる部屋があった。先客が居たので、そこにあった土産物を少々見ながら、席が開くのを待った。私達のテイスティングをしてくれたのは、ワイナリーのオーナーの娘婿で、実際の経営は、彼がやっているとの事だった。彼は最初に、白ワインの辛口を、テイスティング用の小さなグラスに注いでくれた。その後、白の中辛、白の甘口、赤の辛口、中辛、甘口と、全部で6種類、無料で飲ませてくれる。私達は赤、白、どちらも「甘口」が気に入ったので、それぞれ1本ずつ購入した。私達が買った甘口は、どちらも12ドルだった。

 この後、「ツアーはありますか?」と私が聞くと、テイスティングルームの傍らでバーテンダーをしていたもう一人の若い男性が、私達をツアーに連れて行ってくれるということだった。ここで私が待ちに待った、館内ツアーの始まりだ。実は私は、ワインよりも、この建物や敷地内に興味があった。なんせ、こんなお城のような建物は、カンザスシティー近郊で、そうそうお目にかかれるものでは無い。この男性は、男性と呼ぶのには若すぎるほど、若かった。多分大学生だろう。オーナー一家の古くからの知り合いで、ここで働いている人達は、皆、オーナー一家に所属するか、親戚のような付き合いをしている人ばかりで、家族経営を通しているらしい。

 このツアーガイドは、最初に、ここにあるステンドグラスは全て、後に設置されたものだと言った。玄関のドア、テイスティングルームの入口は、美しいステンドグラスがはめられている。後にトイレに行ったが、大きな窓に、カーテン代わりか、大きなステンドグラスが、飾られていた。





 このオリジナルの古い雰囲気、分かってもらえるだろうか。幽霊が出るというのが、分かる雰囲気である。ちなみに、「3階に幽霊が出る」と証言したのは、このガイドである。もちろん、私はちっとも見えなかったが。




 上の二枚の写真は、Odde Fellowsの証書のようなものだと思う。



 結婚式を挙げる場合、この部屋で披露宴をする。夫のいとこが婚約しており、結婚式を楽しみにしている私は、このワイナリーで結婚式を挙げるには、いくらくらいかかるのか、ガイドに聞いて見た。すると、「自分は結婚式のコーディネート係ではないから、詳しいことは良く分からないが、一番高い時期で、館内を全て貸しきりにする場合、5,500ドルくらいで、冬の週日で、貸切にしなければ、もっと安く出来ると思う」と言っていた。日本のホテルに比べれば、破格値である。



 そして、このアンティークな椅子やシャンデリアがある部屋は、結婚式の時、花嫁、または花婿とその家族、友人の控え室となる。アメリカでは、結婚式の当日、花嫁と花婿は、顔を見せないのが習慣で、控え室はもちろん別々である。



 ツアー終了後、外に出てみた。ここにもアンティークな花が付いたテーブルが、沢山置かれていた。ここでピクニックでも出来るのだろうか。食べ物の持込が許可されているか、聞くのを忘れていた。



 建物を出て、外の馬を見に行く事にした。そこで、その近くの「放火」にあった建物の残骸を写真に収めた後、なんと、カメラのバッテリーが切れてしまったのである!何たる失態か!ちゃんと前日、充電しておくべきだった。そしたら、その奥にあったブドウ畑の写真が撮れたのに!これこそ、ワイナリーの醍醐味なのに!あ~悔しい!と思いながら、そこを離れると、なんとさっきまでガイドをしてくれた男の子が、私のカメラより数段上のでっかい望遠レンズが付いたカメラを抱えて、近くに留めた車から降りてきた。(ちなみに皆さん、最近そんなに高級じゃ無いけど、一眼レフカメラにアップグレードしたの、気付いてました?まだ全然機能を使いこなしてないので、変化に気付かないかもしれませんが...)彼は、随分、至近距離から、あの望遠レンズで写真を撮っていたので、多分、背景がぼやけた、ブドウの写真が撮れたことだろう。ああ、そんな写真が撮ってみたかった。

 ブドウ畑の向こうには、「墓地」がある。その墓地の墓石を、一つ一つ、結構丁寧に、見て歩いた。古いものであれば、1800年代に生まれた人もいた。どれも四角い小さめの墓石であったが、三つの輪のマークが付いているものと、付いていないものがあった。これを、後でマネージャーさんに聞いてみると、マークが付いているのは、「Odd Fellows」の会員だった人達だったということだ。

 このワイナリーの敷地内には、テイスティングが出来る、元孤児院と学校だった建物の他に、病院、養老院だった建物があり、そちらの方にも行ってみることにした。ガイドが敷地内の地図を私達に見せていた時、「これらの建物の中には、入らないでください」と言っていた意味が、実際に足を運んでみて良く分かった。破れた窓ガラスから見える建物の中は、どこも荒れ放題だったのである。割れたガラスだの、壊れた建築資材だのが、所狭しにある。屋根はいつ落ちてもおかしく無いほど、崩壊している。なぜこれほどまでに、荒れ果てているのだろう。長い間、風雪に耐えてきたとはいえ、一枚残らず窓ガラスが割れる必要は無いだろうと思った。それを夫に言うと、「子供達が、石を投げて、遊ぶんだよ。自分だって、子供の時は、窓ガラスを割って、遊んだものさ」と、平気で言うのである。日本で生まれ育った私には、そんな記憶は無く、アメリカと日本の文化の違いを感じた。

 荒れ果てているとはいえ、これらの古い建物には、現代の建物には無い美しさがある。夏の息苦しいほどの暑さの中、緑に囲まれたレンガ造りの崩れかかった建物は、私の目には、それは美しく映った。歴史があると言うのは、良いものだ。たとえ幽霊が出没しようが、そこで生きた人達のドラマと歴史が感じられる場所が、私は好きである。

 しかし、その横にあった、白い倉庫のような建物は、中に入る気がしなかった。ドアが開いたその建物の中は真っ暗で、多分、窓が無いのだろう。なんだか、腐臭がする中には、ハエが沢山いた。「ここはきっと、幽霊の住家に違いない!」と、私はその側には近寄らなかった。こんな中に閉じ込められたら、恐ろしくて、気が狂いそうだ。

 古い建物の周りを全て一巡し、また本拠地の建物に戻り、テイスティングルームに入った。暑かったので、私は水を貰い、夫はビールを飲んだ。夫が話している奥で、マネージャーがワインボトルの上に何やら部品をつけて、ピストンで前後に動かしているのが見える。きっと空気を抜いているのだろうと思い、聞いてみたら、やはりその通りで、閉店前に必ずやるようだった。なるほど、そうすれば、開けたワインも長持ちするのだろう。私達が最後の客で、随分長居をしてしまった。このマネージャーさん、かなり良い人である。来年はB&Bも開設し、将来はコンサート会場の建設も考えているらしい。大きなエンターテーメント施設になりそうで、楽しみである。

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