2012年10月4日木曜日

ブランチャード・スプリングス鍾乳洞


 バッファロー・ナショナル・リバー付近の州立公園、バッファロー・ポイントのキャビンには4泊する予定だったが、夫が「ここでできる事は全てやり尽くしたから、ユリカスプリングスに出かけよう」と言う。そこで一日早くここでの滞在を切り上げる事にした。キャビン管理者オフィスに行き、予定より一日早く出かける事にしたが良いかと聞けば、何も問題は無いと言われた。


宿泊代の清算を済ませ、ユリカスプリングスに出かける前に、ガソリンを補給しようと、公園近くのワイルド・ビルズ・アウトフィッターに寄った。給油機はかなり年代物のアンティークに見え、私は写真を撮った。「キャッシュカード支払いの場合、3パーセント高」の張り紙を見た夫は、「なら現金で払おう」と、店の中に入る。そして戻ってきた彼は、「さっき店員と話したら、『鍾乳洞は絶対お勧めだ。そんじゃそこらで、見られる代物じゃない』って言うんだよ。この道の先にあるそうだから、行ってみるか」と言うのである。そこで私達は乗馬に行く為前日通った道をひたすら辿り、看板がある角で曲がった。


 道中、州立公園のパークレンジャーオフィスで貰ったパンフレットを私が読み上げた。大きな一枚の紙を折り畳んだそのパンフレットは、どこから読み始めれば良いのか良くわからず、私は目に映った「ワイルド・ケーブ・ツアー」を声に出して読む。

「この最新コースは、まだ未開発部分の洞窟にお連れいたします。参加者は健康な方で、踵に支えのある丈夫なブーツ着装が必要で、急な坂を登ったり、天井が低い所を通って、肘、膝をついて地面を這ったり、泥だらけになる覚悟をしてください。」

ななんと、「ワイルド」と言うだけあって、そんな事をするのか。なんだか気が退いた。しかし夫はその言葉に、「それこそ自分が望んでいたもの!」と大喜びである。

「ワイルドツアーは要予約で、4月から10月まで毎日開催。」

え、予約が必要?パンフレットには立派な建物に沢山の観光客が写っているのに、そんな制限されたものなのか?その日に立ち寄っただけでは、誰も居ないのか?今から電話しなければならないのか?しかし横の欄を見ると、「鍾乳石トレイル」というのがある。

「このトレイルでは二つの大きな部屋を見学します。短く、初心者コースのこのトレイルは、車椅子の走行可能。」

なんだ、って事は、車椅子でも入れる初心者コースがあるんじゃない。これだったら、私でもできると安心した。

 こちらは国立公園の管轄なのか、同じアーカンソー州の田舎でも随分整備されている。最初に入ったインフォメーションセンターは、新しく清潔な建物である。ああ、清々しい。チケットは大人一人10ドルだった。ツアーの時間まで少々待った。私が赤い水のボトルを持っていると、スタッフの一人が「その水は医療用の物ですか?」と聞いてくる。もちろん、そんな物では無いがと言うと、「水の持ち込みは禁止されていますので、受け付けに預けておいてください」と、にこやかに言われた。鍾乳洞には、外界からなるべく物を持ち込まないように努力しているようだ。

 ツアー時間になり、ガイドが登場した。制服を着たそのガイドは、まず客達に出身地を言わせた。ルイジアナ州、テキサス州、ミシシッピー州と州外から来ている人が多かった。私はこの鍾乳洞について全く前知識が無かったので、そうか、そんな有名な所だったのかと思った。そして、外界から物を持ち込まないように、洞窟の壁に触ることは禁止など、注意事項を述べた。


 エレベーターに乗り、いよいよ洞窟探検開始である!エレベーターから降りると、大きなガラス張りのドアが二枚ある。一枚目のドアを開け、観光客が全員入り切ったところで後ろのドアを閉め、次に二番目のドアが開けられる。これも外界からの影響を妨げる為だろう。



 しばらく通路を歩くと、大きな鍾乳洞が目の前に広がっていた!まるでテーマパークに突入したような気分というか、外の世界とは全く別世界で、大きな空洞にニョキニョキと何万年もかけて成長した鍾乳石が、上からぶら下がっていたり、地面から突き出したりしている。こんな光景を生で見るのは初めてで、圧巻であった。自然の力は偉大である。「車椅子の走行可能」と言っていた通り、歩く場所は全て舗装された通路である。しかし場所によっては随分急傾斜で、濡れている。こんな所を車椅子で通るには、頑強なアシスタントが二人がかりでしっかり持っていないと、車椅子が暴走して大変危険である。洞窟の中は夏でもひんやり冷たく、所々にライトが設置されていた。中を歩くには、ハイヒール等は避けた方が良いだろう。



 私達のガイドはユーモアのある面白い人だった。この鍾乳洞の歴史や鍾乳石について説明してくれたが、その中で私が一番覚えているのが、上の写真中央にある白い部分。確かに船の形に見える。これは「タイタニック」と名付けられているそうだ。




 このトレイルの全てを見終わると、外で待っていたバスに乗り、最初のインフォメーションセンターに送ってもらった。それ程歩いたわけでは無いと思ったが、山の反対側に出るのか、随分長い間乗ってやっと到着した。今回のバッファロー・ナショナル・リバーの旅では、初めてのことに沢山挑戦したが、鍾乳洞に行くのも、私にとって初めてだった。外の世界とは、全くの別世界が地下に存在することを知れて、随分有意義な旅であった。

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