2010年5月23日日曜日

ダブルデッカーバスで、ニューヨーク・ミッドタウンとアッパーマンハッタンを行く


私達が追った青色のダブルデッカーバスは、信号で止まっていたが、私達がドアをドンドン叩いても、運転手はドアを開けようとしなかった。「乗り降り自由で、どこからでも乗れるはずなのに、ドアを開けてくれない!」と私達は憤慨したのだが、後で気付いたことには、「乗り降り自由」と言っても、どこからでも乗れるわけではなく、ちゃんと指定された場所でなければならないのだ。それを知らずドアをドンドン叩く日本人と、身長2メートル近くある男に、運転手は「襲われそうな身の危険」を感じたに違いない。いや、観光客というのは、基本的に無知な者であるから、これくらいの阿呆な行動には慣れているだろうと、今では自分を慰めている。幸いなことに、このバスを追ってしばらく行った場所が、バス停だった。そこでやっと、正式にバスに乗車する。張り切って2階に上がったのだが、私達はそのコースの終着点のすぐ近くから乗ったらしく、すぐに降りるように言われた。なんだか慌しい。しばらく待って、次のコースのバスガイドがやって来た。「これは北方面に行くバスだがいいかい?」とバス会社の人に聞かれたが、初めて乗るダブルデッカーバスだ。どのコースでも良かった。ダブルデッカーバスとは、屋根の無い2階建ての観光バスで、東京の「はとバス」のようなものだ。これに、ガイドが付く。この時のガイドは、「私はナンバー1のガイドだ」と豪語するだけあって、なかなか興味深い話が聞けた。


 
 私達はいつの間にか、セントラルパーク脇にある「コロンバスサークル」にやって来ていた。走るバスの中から写真を撮るのは、なかなか難しい。ガイドが「あそこは有名です」と言えども、カメラを向けた時点では、既に遅しということが多々である。ここでも、コロンブスの像をカメラに収めようと試みるが、うまく取れていない!しかし、そのすぐ隣にあった「タイムワーナーセンター」は、ニューヨークっぽく取れたと自負している、今回お気に入りの一枚である。このバスガイドの説明では良くわからなかったのだが、後にインターネットで調べたところによると、この中には、有機野菜の販売で有名な「ホールフーズ」が地下に入っているということだ。なるほど、ニューヨーカー達は、こういう風にデパ地下で食料品を買っているんだと、妙に納得した。今回、ペンステーションの真ん前、ペンシルベニアホテルに泊まった私達は、、一度も「グローセリーストア」を見なかった。一体、ニューヨーカー達は、どうやって食料品を調達しているのだろうと、不思議で仕方がなかったのだ。

「デパ地下」か。

広大な土地が延々と続くアメリカ中西部には無い感覚である。




私が数多く撮った今回のダブルデッカーバスの写真の中に、この"The Dorilton"がある。「ドリルトン」は、どうやらニューヨークのランドマークに指定されているらしく、19世紀のニューヨークが色濃く残る、高級アパートメントである。私が撮った写真ではあまり良くわからないのだが、窓には美しい鉄製の手すりがあったり、彫刻が付いていたりする。もっと素敵な写真が見たい人は、下のウェッブサイト参照要である。中もとってもゴージャスな様子で、こんな所に住める人は、きっと超お金持ちなんでしょうね~、という感じである。

http://www.nyc-architecture.com/UWS/UWS018.htm



お金持ちな人しか住めない高級アパートメントといえば、次にご紹介の"The Dakota"も負けていない。なんせこの「ダコタ・ハウス」の入居には、厳しい審査があって、お金持ちでも入居を拒否されたセレブがたくさんいるというのだ。このアパート(日本風に言えば「マンション」だと思うが)は、ヨーコ・オノが住むアパートメントとして有名で、この建物の玄関口で、彼女の夫、ジョン・レノンが射殺された。バスガイドは、「ブルーの制服を着ているドアマンが立っている、ちょうどあそこが、ジョン・レノンが撃たれた場所です」と説明した。その前では、写真を撮っている観光客が多くいた。















バスはさらにアッパー・ウェストサイドを北上し、アメリカ自然史博物館、"American Museum of Natural History"が見えてくる。人それぞれ、この博物館の説明の仕方は違うであろうが、私にとっては、"Mad About You"というドラマで、リサ・クドローが案内係をしていた博物館として、記憶に残っている。このドラマの初回が放送されていた頃、私はアメリカに渡り(というと私の年齢がバレそうで怖いのだが、かれこれ20年近く前の話である)、このドラマが超お気に入りで、毎回ビデオに取り、台詞を全部覚えるまで、何回も見た。たぶん一話につき、100回は見ているだろう。本当の話である。今でも、台詞をすらすら言えるシーンがある。だから私にとって、主役のヘレン・ハントは、英語の先生のようなもので、彼女を見る度、ジーンと熱い感動がある。

というのは私個人の勝手な思い入れで、この「アメリカ自然史博物館」には、ほとんど関係ない話だ。この博物館の中には、大きな恐竜があり、これをリサ・クドローが説明していたのを、思い出したのだ。そしてヘレン・ハントの役柄の夫、ポールが「子供の時、良くここに来た」と言っていたので、ニューヨーク子にとっては、社会見学に来るような場所なのかなと、思ったのだ。"Mad About You"の話を出したのは、このためだ。


(「アメリカ自然史博物館」には全く関係ないことは、充分承知の上で、"Mad About You"が見てみたい人は、下のウェッブサイトをクリックしてください。)

http://www.crackle.com/c/Mad_About_You_Minisode/



この後、バスはマンハッタン北西の「モーニングサイド・ハイツ」という地域に入る。ここには、「セント・ジョン・デバイン大聖堂」という大きな教会がある。何でも1892年に建設が始まってから今だに未完成な、世界最大級のゴシック教会だそうだ。この前にさしかかると、ガイドは「あそこにある像は、善が悪に勝利することを象徴している」と言った。セント・ジョン・デバイン大聖堂前は、このダブルデッカーバスのバス停にもなっていて、この教会に立ち寄った人たちが、バスに乗り込んで来た。その中の一人が私の後ろに座ったのだが、「とても美しかった」と言った。














更に北上したバスは、マンハッタンの西側にあるハドソン川方面に行った。川岸の公園のような場所に大きな白い建物「グラント将軍の墓」と、「リバーサイド教会」があった。ここで大きく方向転換をし、東側のハーレム方面に向けて坂を下る。もう一年近く前のことなので、ガイドが言ったことを一字一句覚えているわけではないのだが、この地域のことを、ネイティブアメリカン達が、「坂が多い場所」と呼んだと言っていたと思う。確かに急な坂道が多く、道の横には「コロンビア大学」の校舎が所々にあった。

道の途中、工事現場で働いている労働者達が、ダブルデッカーバスに乗る私たち観光客をひやかしにやって来た。ヘルメットを被り、汗まみれな彼らを、「真のニューヨーク人!」と感動して写真を撮ったのは、バスの中で私だけかもしれない。
「俺は、ニューヨークが嫌いだ!」
なのに、あんたたちは、こんな所に来ているのかい、と言いたかったのだろう。ニューヨークで生まれ育っていれば、そんな物かもしれない。



今回ニューヨークに行って驚いたことの一つに、治安が良くないと言われる「ハーレム」が、ニューヨークでも高級アパートメント地域と言われている場所から、それほど遠くないことだ。十分歩いて行ける距離である。最初にボストンからグレイハウンドでニューヨーク入りした時、ハーレムを通過したが、そこには、古いがしっくりと感じの良い、おしゃれなアパートがたくさんあり、こんな建物に住んでみたいと思うほどだった。

ハーレムの目抜き通り、「マーティン・ルーサー・キング大通り」こと125th Stに、「アポロシアター」がある。ここからは、多くの黒人エンターテーナーが誕生した。マイケル・ジャクソンが所属した「ジャクソン5」もここからデビューし、彼が亡くなった時には、アポロシアターのオーナーだか、マネージャーが、劇場前でコメントを発表していたのを思い出す。今度ニューヨークに行く時は、ぜひ立ち寄りたい場所である。



緑の玉が屋上に乗った建物。これが何かといえば、「マルコムX」が説教をしたイスラム寺院である。少々インターネットで彼のことを調べてみると、なんと、私のアメリカのホームタウン「ネブラスカ州オマハ」で生まれたらしい。そんなことは、露ほどにも知らなかった。今度オマハに帰ったら、マルコムXの生家が残っているか、探してみようと思う。




バスはこの後、ハーレムを過ぎ、美術館、博物館が林立する五番街、「ミュージアム・マイル」を行く。最初は、「ニューヨーク市立博物館」。実はこのダブルデッカーバスのチケットには、この「ニューヨーク市立博物館」の無料券が付いていた。(というか、込みであったと考える方が、正しいと思うが。)夫が、「ここで降りて博物館を見学する?」と聞いてきたが、私は妙に、今回のガイドにほれ込んでいて、彼の説明を全部聞きたいという気分だったので、「後でまた戻って来れるわ」と、その時バスから降りなかったのである。しかし、そんな時間が後にあったかといえば、全く無く、あの時降りなかったことを、大変後悔している。教訓:できることは、今すぐやっておけ。



ニューヨーク市立博物館を10ブロックぐらい南に下ると、「鉄鋼王」と呼ばれた実業家「アンドリュー・カーネギー」が住んでいた家を博物館にした、「クーパー・ヒューイット・ナショナル・デザイン・ミュージアム」がある。さすが、「カーネギーホール」を建設するくらいの人だけあって、お家も大変美しい豪邸である。家を見るだけでも価値がありそうである。




ソロモン・R・グッゲンハイム美術館。建物の形が大変ユニーク。









メトロポリタン美術館。世界最大級の美術館である。ずいぶん昔、アメリカに移住する前に一度、ニューヨークを訪れたことがあったが、その時、この博物館の中に入った。一日で見切れないほど大きな美術館である。
それにしても、ニューヨークには、こんなにも美術館がたくさんあって、羨ましい限りである。



こちらは、"Ukrainian Institute of America"。大変美しい建物だと思う。「ウクライナ文化の理解を広める」というのが、基本信念だと見受けられる。詳しいことが知りたい方は、ウェッブサイトを、どうぞ。

http://www.ukrainianinstitute.org/index.php









カーネギーホール。次のニューヨーク滞在では、ここでコンサートを聴きたいものである。














この後バスは、終着点のタイムズスクエアに到着し、ダブルデッカーバスで巡るニューヨーク・ミッドタウンとアッパーマンハッタンの旅は終了した。

2010年5月21日金曜日

ニューヨーク二日目、ロックフェラーセンターに行く



 この日の朝は、六月だというのに寒かった。私達夫婦の宿業というか、旅に出かけると、どこに行こうと、どんな季節であろうと、いつも寒いのである。こんなに寒くなることを予想していなかった私は、ホテルの近くでジャケットを購入したかった。そこで朝食も食べずにホテルを出て、近所を歩き始め、すぐに「オールドネイビー」を発見する。そこでは男性服が半額のセールをしていた。私の上着を買うのが目的であったが、そんなことはさておき、夫は男性服売り場、私は女性服売り場に直行し、別行動をする。何度も試着をし迷った挙句、Tシャツを2枚、パンツを2枚、上着を2枚購入した。

 戦利品を抱え、私達は近くの「ダンキンドーナッツ」に入る。私はべーグルとアイスティーを注文した。ニューヨークに行く前は、インターネットでレストラン情報も収集し、「ランチにはあそこ、ディナーはここ」などと夢見ていたのだが、実際ニューヨークに行って、車もない上に、地理も良くわからないので、アメリカにはどこにでもある「ダンキンドーナッツ」などに入って、朝食を食べるのである。トレイに食事を載せ、二階に上がる。そこは少し古い雑居ビルといった感だった。こういう所に入ると、日本を思い出す。窓の外から隣のビルが見える。下には歩いている人達が見える。私のカンザスシティーの日常生活には、こういう風景は存在しない。それがいいのか悪いのかは、良くわからないが、こういったたくさんの人々が押し込まれた都会とは、かけ離れた場所で生活している自分を認識する瞬間である。

 べーグルはあまりおいしくなかった。プレーンを頼んだ上に、クリームチーズも付けず、温めてもいなかったので、固く冷たいべーグルは、悲しい味として私の記憶の中に残された。

 一旦ホテルに戻り、服を着替えた後、私達はいよいよ、本格的にニューヨーク観光に出かけた。私がニューヨークでどうしても行きたかった所の一つが、ロックフェラーセンターだった。ここは、私がいつも見ている朝のニュース「Today」が収録されている場所で、ひょっとしたらMatt Lauerや、Ann Curryに会えるかもしれない!それに、ここではツアーがあり、スタジオの中に入れるというのだ。 

ホテルからロックフェラーセンターまでは、歩いて行ける距離だった。人でごった返すタイムズ・スクエアーに行くと、この日も、路上でチケットを売っている人がたくさんいる。その中のブルーのジャケットを着た若い女性から、「ダブルデッカーバス」のチケットを購入した。二日間載り放題で、美術館の入場券や観光船の無料券も付いている。もう一社あるダブルデッカーバスのチケットよりも安かったので、良い買い物をしたような気がした。



 タイムズ・スクエアーから道を曲がり、しばらく歩くと、テレビ等でよく見る建物が出てきた。「ラジオシティー・ミュージックホール」だ。クリスマスの時期になると、ここで行なわれる「クリスマス・スペクタキュラー」という催し物に出演するダンサー達が、朝のニュース番組に登場し、クリスマス気分を盛り上げてくれるものである。この建物の前では、観光客がカメラ片手に写真を撮っていたので、私も夫もそれぞれのカメラで、思い思いの写真を撮り始めた。









 そしてしばらく行くと、やっとお目当ての「ロックフェラーセンター」が見えてくる。ビジネスマン等が行き交う中、ここでも写真を撮った。観光客が正式に入る入口がどこかよくわからないまま、建物の中に入る。少々古いながらも、なんだか高級ホテルの受付といった感で、私達が目指しているツアーチケット売り場ではないのは明らかだ。そこで制服を着た男性に、ツアーのチケットがどこで売られているか聞いてみると、ギフトショップということだった。彼の言葉を頼りに、ウロウロ歩いていると、「30 Rock」で有名なティナ・フェイの大きな写真があったので、「30 Rock」を見ている私達は、近くにいた人に頼んで、写真を撮ってもらった。




 ギフトショップのドアを開け、キャッシャーに行くと、今日のツアーのチケットは売り切れで、明日の早朝6時以外、しばらく予約は取れないと言われた。そんな早起きな私達ではないので、すっぱりツアーは諦めることにした。やっぱり人気のあるツアーなのだ。建物内をぐるぐる回っているうちに、なんだか見覚えのある場所が目に入った。大きな日傘が上に付いたテーブルが、外にたくさんある。もしかして、あそこは冬になるとスケートリンクになって、オリンピックのフィギュアスケート選手達が、華麗な演技をNBCのニュース番組「Today」で披露してくれる場所ではないか!俄然、力が入って、夫と一緒に外に走り出す。ぐるっと反対側に回ると、「ロックフェラーセンター」の象徴とも言える、あの金色に輝く大きな像が、堂々とある。ここに来てやっと、「あ~、ロックフェラーセンターにやってきた」という実感が湧いた。「Today」で良く見る場所が、そこかしこにある。「あ~、あの噴水地域は、クランベリーの水洗いをデモンストレーションしてた場所だ」とか、「そういえば、この間、「ホワイトカラー」の宣伝で、白いシャツをここで配っていたな」とか、例を挙げれば切りがない。すっかりおのぼりさん気分であるが、その場は私達のような観光客で満ち溢れていた。夫がロックフェラーセンターの創設者「ジョン・ロックフェラー」の碑を見つけ、写真を撮って欲しいと言った。私が撮った写真に映る夫は、なんだか誇らしげに見えた。




 こうしてこの後、ロックフェラーセンターを跡にし、近くの道を走っていた「ダブルデッカーバス」を追った。